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4月7日 本牧亭講談会(主任:鶴遊)@御茶ノ水

 この会はおそらく、国内で催されている一番コア(ディープ)な講談の会であろう。客の入りが最近良いと本牧の女将が嬉しそうに語っていました。

★★★本牧亭講談会(御茶ノ水・太陽 13時02分開演)

●田辺凌天 御竹如来
●神田すず 笹野権三郎 海賊退治
●田辺一乃 寛永三馬術 松浦潟の血煙
 ◇肥前国唐津12万3千石の城主は寺沢広高。家来には150石取りで筑紫市兵衛という馬術の名人がいる。広高公には堅高(かたたか)という25歳の跡継ぎがおり良い嫁を迎えたいと常々考えている。ある時薩摩・島津家から桃園姫が堅高の元、お輿入れになることが決まる。侍36人、女中24人という島津の一行は乾坤丸に乗船し、唐津の港に上陸した。
 宴が始まると、島津家の重役である宍戸右源太という酒乱の者が騒ぎ出す。島津家は源頼朝以来のお家柄で77万石の大身。対して寺沢家は家康から12万石を拝領しているだけ。小身の寺沢は相撲のフンドシ担ぎのようなものだと馬鹿にする。この態度に対し寺沢家の家臣の者たちは怒りでいっぱいだが、市兵衛は今日一日のことだからと懸命になだめる。
 宴が終わり、市兵衛は屋敷に帰る。家には母が一人、息子の市兵衛は39歳であるが妻を娶ろうとはしない。気が高ぶってなかなか寝付けない市兵衛。
 翌朝早く屋敷を出て、港へ向かうと乾坤丸が停泊し、はしけを渡って薩摩の者たちが乗船しようとしている。そこで市兵衛は右源太に「昨夜の言葉は本心からか、酒の上の事でか」と問い質す。薩摩武士である右源太は「酒の上」でとは言えず「本心である」と応える。すると市兵衛は右源太に斬りかかる。右源太は槍の名手であるが、腕は市兵衛の方が勝りついには斬り倒してしまう。面倒なことに関わりたくないと薩摩の者たちはそのまま去ってしまった。
 ただちに市兵衛は殿の広高の前に呼び出される。悪口雑言を並べる右源太を斬り倒し、殿の恥辱をすすいだ件でお褒めの言葉を頂けるものだと市兵衛も周りの者も思っていた。しかし島津の家との関係を重く見る広高は、市兵衛を捕縛し相手方にその身を引き渡すようにと家来たちに告げる。殿の名誉のために相手を斬りつけた市兵衛を捕らえてよいものかと周囲の者たちが困っていると、家老の塚本織部という者が現れる。織部は国のため、主君のために刀を抜いたのならば罪はない。もし市兵衛を断罪するなら周りの供の者たちも一同やめるだろうと殿に迫る。広高は仕方なく、市兵衛を長の暇を言い付けることでその場は収まった。
 浪人の身となった市兵衛は肥前を去り、3年後には野州・宇都宮で大きな事件に遭遇するがその話はまたいつの日か。
 <仲入り>
●鈴々舎八ゑ馬 長短
 ▽「長短」と言えば、八ゑ馬さんの大師匠である五代目小さん師もよく演じた話だが、今回の話は上方版の「長短」とでもいうべきか、かなり筋立てが違う。「片方だけ穴の開いた羽織を着れるか」「いやもう片方も燃えてきた」という落ちも気が利いていて面白い。
●田辺鶴遊 彼女(かのおんな)の行方
 ◇昭和2年春。池袋の映画館で一人の巾着切りの女が捕まる。捕らえたのは池袋警察署の刑事、関口為吉。捕まった女の名は松尾波子。元はこの劇場の従業員であった。波子には病身の父親がおり、劇場の支配人も「この子は気の毒な身の上なのです」と言う。二度とこんなことはしないようにと波子は関口刑事から説諭され、その場は放免された。
 昭和7年。関口は捕り物で大怪我を負い、湯河原の温泉で療治している。そこで部屋に入ってきたカミソリ売りの女。女は左手を差し出し、右手を後ろに隠している。この女こそ波子であった。波子は右手の人差し指と中指を根元から切断している。事情を聞くと池袋の映画館から放免された3日後、病身の父親が亡くなる。その後カフェで女給の仕事をしていたがそこで山本茂雄という青年と出会い同棲をするようになる。しかしこの山本という男の正体は関西から流れてきたスリ集団の一人であった。悪い男だとは分かりながらどうしても離れられずズルズルと2人の暮らしが続く。この男は病弱であり窃盗ができなくなった彼に代わり、波子がスリをするようになる。その山本が間もなく亡くなろうという時、これまでの事を詫び自分が死んだら波子には真っ当な道を進んで欲しいと言う。山本は亡くなり、波子はスリから足を洗い、その証にと自らの指2本をカミソリで切断する。以上が波子が語ったことである。
 昭和12年暮れ。関口刑事の兄が田舎から上京し、2人浅草の松屋デパートで買い物をしている。すると兄はがま口を盗まれる。そこで2人が偶然出くわしたのは波子。波子が店の中を廻ると殿様小僧の伝次というかつてのスリ仲間を見つける。関口刑事が相手ではと素直に捕まる伝次。昔の仲間を売ってしまったと泣く波子。波子は今、大森で松葉という小さな飲み屋を開いていると告げ、関口と別れる。
 昭和13年春。関口刑事は捕り物で大森に来ていた。波子から聞いた松葉の店を訪ねる。その店にいた男に聞くと波子は亡くなったという。スリ仲間を売った仕返しに白昼路上でナイフで刺されたという。今日は波子の四十九日である。小さな位牌を前に関口は静かに手を合わせそっと涙するのであった。
 名も無き女性の物語。十二代目田辺南鶴作「彼女の行方」の一席。
 (15時30分終了)

180407a本牧亭講談会@太陽


180407b本牧亭講談会@太陽


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